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カメレオンエマルション

最近の論文から

DNAがサブミクロンサイズの1分子組織体をつくります

DNAつくる構造体が注目されています。例えばDNAオリガミは

鋳型となる長い一本鎖DNAを、その中の特定の配列と相補的な短鎖DNA(ステープラーDNA)を組み合わせて任意の形状に折り畳んでいきます。私たちは、DNAの複製過程で発生する特徴的な分岐構造(複製フォークやホリデイジャンクション)に着目して研究しています。ここでは三叉構造を持つDNA二重らせんが自己組織的に会合する現象に着目しました。しかし、DNAの会合は可逆的起こるので、高温下やイオン強度の低い溶液中では解離してしまいます。そこで、光反応によって共有結合を生成して、DNA鎖を架橋することのできる低分子化合物(ソラレン)と組み合わせました。その結果、基板表面での高分岐ポリマー生成によりサブミクロンサイズに成長することを発見しました。今後、1分子電子材料として利用が期待されます。
 

最近の論文から

抗原抗体反応を利用して残留農薬を分析します。

感染性の病原体などの外来の物質の脅威にさらされると、生物

は、抗体を産生して、これらを排除しようとします。抗体は外来物質を正確に認識して結合するので、人工的に産生させることでいろいろな使い道ができます。酵素免疫測定法はその代表例で、高感度かつ高選択的な分析が可能です。私たちは、試料導入・分離・検出など一連の分析操作を手のひらサイズの一枚の基板に集積化した新しい分析システムーマイクロ流体分析システムーの研究を行ってきましが。今回、酵素免疫測定を組み込んだシステムを確立し、農薬残留物の高性能分析法を開発しました。本システムを用いれば、高価で大型の分析装置は必要ありません。分析が必要な現場に持参して、その場で測定することもできます。そのため、今後環境分析への応用が期待されます。  
 

電気化学発光 : ECL

電気化学反応を利用して高効率に蛍光発光させます。

吸光光度計や蛍光光度計では装置が複雑で大型になりがちで

す。一方、電気化学測定法は小型化でマイクロ流体分析システムに向いていますが、検出感度は蛍光法には及びません。そこで、両者の長所を兼ね備えた、電気化学発光分析法を組み込んだマイクロ分析システムの研究をしています。効率良く反応する条件を検討するだけでなく、独自の発光物質の合成研究と併せて、小型高性能な検出デバイスの開発に取り組んでいます。
 

分光電気化学分析

不安定・短寿命化学種を精度よく分析します。

ラジカルに代表される不安定、あるいは寿命の短い化学種の分

析法はこれまで開発されていませんでした。そこで、マルチチャンネル分光システムを適用して、電極反応で生成させたラジカル種をモデルにした研究を開始しました。電極/溶液界面で生成した化学種の吸収スペクトルを高速・高感度に測定するだけでなく独自の解析法を適用して興味深いデータが集まりつつあります。
 

カーボン量子ドット:CQD

「グリーン」な量子ドットをバイオ分析に応用します。

無機半導体である量子ドット(CD)は、有機化合物には見られ

ない特徴がある蛍光性ナノ材料ですが、有害な重金属を含む点が応用面でネックでした。最近、ほぼ炭素質だけで出来ているナノ粒子が報告されました。これがカーボン量子ドット(CQD)です。CQDはユニークな蛍光特性があるばかりでなく、生体に対する毒性が低いので、バイオ分野での利用が始まっています。私たちは、CQDが過シュウ酸エステル化学発光分析法における蛍光体として良好な性質を示すことを初めて報告しました。これを利用した環境分析法の研究が始まっています。
 

1分子イメージング

原子間力顕微鏡でバイオ分子を可視化して分析します。

写真は原子間力顕微鏡で観察したpBR322 DNAです。プラスミ

ド特有の超らせん構造(DNA二重らせんが捩れた状態。捩じった輪ゴムのイメージ)が1分子のレベルで良く分かります。私たちは、プローブDNAの塩基配列を工夫して、ターゲットDNAが結合すると超分子構造が劇的に変化するようにデザインしました。これによって、AFMによる1分子観察によってターゲットDNAを検出する分析法を提案しました。この他にも、酵素やタンパク質を1分子観察することが可能で、酵素反応の可視化検出について研究しています。
 

DNAセンサー・遺伝子センサー

電気化学測定で薬剤やガン遺伝子を検出します。

ターゲットDNAをプローブDNA、およびラベル化DNAとのサン

ドイッチ錯体に誘導体化して検出します。DNAは、酵素のような触媒作用がありません。またグアニンは酸化還元反応により分解しやすいので、バイオセンサーで一般的な測定法を利用して検出することが困難でした。ここで、ターゲットDNAは遺伝的に意味のある配列(遺伝子)とそれに付随する配列を含んでいます。私たちは、前者の認識に用いるDNAフラグメント(DNAプローブ)に加えて第三のDNAフラグメントを酸化還元活性な低分子化合物でラベル化して用いる方法を考案しました。このとき、遺伝子に付随する配列に相補的な配列とすれば、図のように三本のDNA鎖からなるハイブリダイゼーション産物が生成するので、ターゲットDNAを電気化学的に検出することができます。ターゲットDNAが一塩基多型を含む場合には、ハイブリダイゼーションしないように測定条件を設定することができました。
 

PNAzyme

アミド結合が主鎖になって核酸と酵素が一体化した人工の物質です。

ワトソンとクリックによってDNA二重らせんの構造が明らかに

されると(1953年)、ほどなくして、人工の核酸あるいは核酸アナログの研究がスタートしました。ペプチド核酸(PNA)はその一種で、核酸が持つリン酸ジエステル結合に代わってペプチドと同じアミド結合を介して核酸塩基が繋がった構造をしています。一方、リボザイムに見られるように、核酸はしばしは酵素機能を発現して生命現象に関与してます。これは、核酸の転写による酵素産生のルートを外れており、そのため、核酸と酵素の関係を卵とニワトリの関係に例えた議論がなされるようになりました。私たちは、PNAの構造に注目して、触媒作用のあるペプチドと一体化して合成した人工の核酸触媒ーPNAzymeーを提案しました。これまでにペルオキシダーゼ活性を示すPNAzymeの合成に成功し、バイオ分析への応用について報告しています。
 

Designer Protein

単位構造ユニットから組み立てた人工のタンパク質です。

分子認識や触媒作用を担うドメインを組み立ててデザインした

人工タンパク質の研究をしています。酵素やタンパク質、受容体は特殊な立体構造をとることで機能を発現します。すなわち、特定のアミノ酸配列を持つペプチドが、ヘリックスやシートといった二次構造を維持しながら配置されたドメインが分子認識や触媒作用を担っています。私たちは、基本になる機能・構造ユニットを抜き出して、空間配置の足場になるペプチドをワンポット合成することで人工タンパク質酵素の実現にチャレンジしています。