九州大学大学院工学研究院応用化学部門 機能材料化学分野 田中研究室

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 6年間で学んだこと

こんにちは。ブログを読んでいただきありがとうございます。
6年間、田中研究室でお世話になりました山口と申します。

この度博士号を取得し、研究室を卒業しました。
最後にブログを書く機会をいただきましたので、私個人の視点からこれまでの研究生活を振り返りたいと思います。

研究室に配属される前は、特に具体的にやりたいことはありませんでした。
ただ、理系図書館に行って、「時間とはなにか?」「生命の正体は?」みたいな、大きな謎の解明に向かった近代科学の発展について書かれた本を読むのは好きでした。(アインシュタインが相対性理論を見出した歴史なんて感激します!)
これらに感銘を受け、まだ分かっていない「何か」を解明・追究したいという想いはありました。

研究室選択の時、田中研究室ではちょうどCREAと呼ばれる接着のプロジェクトが走り始めていました。
接着は当たり前に使われている現象ですが、その本質、例えば「なぜくっついているのか」などはよく分かっていないというのです。
その主な理由は単純で、接着界面は埋もれていて見えないからです。
このプロジェクトは、そのよくわかっていない接着現象を科学的に明らかにするという、まさに大きな謎の解明を目指すものでした。
新しい科学が生み出される瞬間に出会える予感がして、私は当研究室を選択しました。

配属後の田中先生との面談でこのことを伝えると、接着剤の接着界面に関する研究という、接着現象の中核となるテーマを与えてくださいました。
最終的に、私は卒業までこのテーマについて研究しましたが、このテーマで良かったと心から感じています。それほど興味を持って取り組むことができました。

接着界面を見るのは一筋縄ではいきません。実験の工夫と、高額な装置が必要になります。
大変有難いことに、後者については苦労することはありませんでした。(大感謝)
実験では、トライ&エラーを繰り返して、うまく測定ができる適切な試料調製法と測定条件を探します。
うまくいかないとき、これは本当に実現可能なのかと途方に暮れることもありましたが、うまくいったときの達成感も含めて、総じて楽しかったです。

このように、学部3年生までの座学と研究の一番の違いは、ゴールが明確か否かだと考えます。
イメージは、大海に出る船のような感覚です。(あくまで私の例えです)
出港時は明確な指針があり、目標に向かって迷うことなく進むのですが、陸が見えなくなると辺り一面が海になり、今自分がどこにいるのか分からなくなります。
進んでいる方向が正しいのか、後退しているのか、はたまた停滞しているのか、自信が持てないこともありました。
そんな海でゆらゆらしているときの道しるべが、検討会や学会での発表でした。

検討会をはじめとした研究室内のディスカッションでは、向かうべき方角を照らしていただけました。
一方、学会では、研究の指針だけでなく、今の自分の立ち位置のようなものが見えました。
例えば、私は接着学会に5年間毎年参加させていただいたのですが、そこで発表したときの企業やアカデミアの方からの、私の研究に対する視線や興味は、とても重要な研究を遂行していることの自信になりました。
私の発表の時に多くの人が入ってきて、大きな拍手をいただいたときは本当に嬉しかったです。
このように、発表する機会は、研究の方針と重要性を再確認できる貴重なマイルストーンでした。

もし一つのテーマに一つのゴールを定めるとしたら、それは論文化だと思います。
論文は書面で残り続けるため、学会発表以上に厳密さが求められます。
そのため、トライ&エラーの痕跡が全て使われるとは限りません。
論文を見返して後から考えると、あれは無駄な実験だったと感じることもあります。
でも、そのような遠回りは、形としては残らないものの、その論文を作成する上で間違いなく必要なプロセスだったと思っています。
失敗と無駄な遠回りがあったからこそ、最短に近い道が分かる、それが研究だと信じています。

これらを没頭して続けていると、いつの間にか卒業まで来ていたという感覚です。
私の人生の中でも有数の濃密で充実した時間であったに違いありません。
この貴重な経験をもって、社会人としてのスタートラインに立てることをとても誇りに思います。

本に書かれている科学の歴史からは決して学ぶことができない、肌感覚での体験をもって科学を切り拓いていくアプローチを学ぶことができました。
そしてもう一つ、研究生活を通じて学んだことは、感謝です。
学位を取得する上で、田中先生をはじめ、先生方、スタッフの皆様、先輩、後輩、家族にもたくさんのご指導をいただき、たくさん助けていただきました。
充実した研究生活を送ることができ、学位が取得できたのは紛れもなく皆様のお陰です。
全員が本気な環境だからこそ、本当の意味で人を尊敬し、感謝する心が得られたと思います。

最後に、田中先生ならびに研究室の皆様、誠にありがとうございました。
田中研究室のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。

機能材料化学分野

田中研究室

Tanaka laboratory

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