Research

目次に戻る

3. 環拡張ポルフィリノイド


3-1. 二重N―混乱ヘキサフィリン

混乱ピロール部位を有する環拡張型ポルフィリンとして最初に合成されたのが二重N-混乱 ヘキサフィリン(Doubly N-Confused Hexaphyrin, N2CH)である。通常のヘキサフィリンと 同様に酸化体・還元体が存在し、さらに、混乱ピロールのalpha位がオキソ化された誘導体が 得られている。特に、オキソ化された混乱ヘキサフィリンのフリーベース体は、分子内水素結合 により非常に平面性の高い構造を有している。さらに、その大きな環内部空孔内には金属イオンが 2個配位でき、Cu(II)-、Ni(II)-、Co(II)-二核錯体等が安定に単離されている(JACS 2003, Chem. Eur. J. 2006)。この N2CHの金属錯体は 高速光応答性を有することが明らかになっている。


3-2. N-混乱ペンタフィリン

N-混乱ペンタフィリンは混乱ピロール部位を有する環拡張型ポルフィリンの一種である。 混乱ピロールを1個有する場合には、ペンタフィリンの構造的要因と混乱ピロールの反応特性の 両方により、縮環部位を2カ所有する二重縮環ペンタフィリンが生成する (Angew. Chem. Int. Ed. 2004)。一方、混乱ピロールを2個有する場合には、1個または 2個の混乱ピロールがオキソ化されたペンタフィリン誘導体が得られ、結晶中においては、 前者は分子間水素結合により二量体構造を構築しているのに対して、後者は分子内水素結合により 単量体で存在している(Angew. Chem. Int. Ed. 2004)。

この他にも、混乱ユニットを有するサフィリンやオクタフィリンの合成にも成功している。


3-3. 一重N-混乱ヘキサフィリン

一重N-混乱ヘキサフィリンは混乱ピロール部位を1個有する環拡張型ポルフィリンの一種である。 通常のヘキサフィリンと 同様に26π・28πが存在し、 さらに、混乱ピロールのα位がオキソ化された誘導体も 得られている。 二重N-混乱ヘキサフィリンとは異なり、 非対称な環内空孔を持つ一重N-混乱ヘキサフィリンは2価と3価の金属イオンを 同時に配位することができる。(例) Au(III)-Pt(II)二核錯体 (Angew. Chem. Int. Ed. 2011)


3-4. 三重N-混乱ヘキサフィリン

三重N-混乱ヘキサフィリンは混乱ピロール部位を3個有する環拡張型ポルフィリンの一種である。 通常のヘキサフィリン、一重、二重N-混乱ヘキサフィリンが長方形の分子構造を取るのに対して、 三重N-混乱ヘキサフィリンは三角形の分子構造を取る (Angew. Chem. Int. Ed. 2009)。 また、N-混乱ヘキサフィリンの中で最も大きな二光子吸収断面積を有する(Chem. Commun. 2010)。


目次に戻る