Research

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8. NCPおよびその誘導体の機能性


8-1. アニオン認識・捕捉

NCPの環外周部窒素は金属イオンとの相互作用だけでなく、 アミン型(NH)になることでアニオンとの相互作用も可能となる。 たとえば、メゾ位をペンタフルオロフェニル基で置換したNCP-M(II)錯体 (M = Ni, Pd, Cu)は、環外周部NH1点でハライドイオンを捕捉する。 1個のNHでの相互作用にも関わらず、従来知られている他点相互作用を利用した アニオン捕捉分子と遜色ない会合定数であることがわかった(J. Incl. Phenom. 2004)。 この大きな会合定数は、分極したNHに効果に加えて、非対称なNCPの構造に由来する イオン-双極子相互作用と、大きな分極率に起因するイオン-誘起双極子相互作用に よるものであることが、実験と計算化学から示唆された(Chem. Asian. J. 2006)。 また最近、アミド型NCPのSn(IV)錯体について、ハライドイオンのアキシアル位での捕捉、 また、それに伴う蛍光の増大が観測された(Angew. Chem. Int. Ed. 2006)。


8-2. 触媒

NCP-Rh(IV)I2錯体が、スチレンとジアゾ酢酸エチルとのシクロプロパン化反応の 効率的な触媒として働くことが明らかになった。通常ポルフィリンのRh(III)錯体と比較すると、 生成物の収率やtrans/cis比が高く、これはNCPの高酸化状態の安定化と構造の非対称性を 反映していると考えられる(Chem. Commun. 2006)。また、NFP-Re(VII)錯体が、 ピリジン-N-オキシドからトリフェニルホスフィンへの酸素転移反応の高効率触媒として 機能することがわかった(Chem. Commun. 2005)。


8-3. 一重項酸素発生光増感剤

cis型NCPが一重項酸素発生光増感剤として機能することが明らかになった。 フリーベース対では、効率的な一重項酸素の発生は観測されなかったのに対し、 Ag(III)錯体の場合には、三重項状態の安定性を反映して、非常に効率よく 一重項酸素を発生させる(量子収率:81%)ことがわかった(Chem. Lett. 2003)。


8-4. 高速光応答性

二重混乱ヘキサフィリン誘導体が数百ピコ秒オーダーの高速光応答性を有していることが 明らかになった。さらに安定な二重混乱ヘキサフィリンを用いることにより、 高耐久性を有する高速光応答材料の創製が期待される(Mol. Cryst. Liq. Cryst. 2006, J. Photopolym. Sci. Tech. 2006)。


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