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研究概要

本研究室では、自然が生み出した機能性物質であるポルフィリン分子に人工的な変異を与えることで、自然界にはない機能を生み出し、次世代の機能性分子へと進化させることを目標として研究を行っています。すでに生命分子として完成度の高いポルフィリン分子に、「混乱」という変異を導入することで、分子の多様性を引き出すことができます。そこに機能性という名の淘汰圧を加えて人工進化を試み、高性能の機能性分子の創生を行うという、世界でも類例のない研究を行っている特色ある研究室です。  「変異と進化」の特性を活用する、機能性分子の創製にチャレンジすることにより、これら生命分子の背後にある変異と進化のメカニズムを化学的に解明するヒントが得られることを期待しています。そこでの知見を元に研究を展開することで、生命システムを構成する機能分子群の「進化の原理」を取り入れた、従来の概念とは全く異なる「物質創製の新しい方法論」を打ち立てることが可能になると考えています。私たちが創製した新しい機能性分子の出現により、環境やエネルギーといった、現在の人類が抱える重要な課題にブレークスルー的解決がもたらされ、持続的で発展可能な社会が実現することを夢見ています。

(1) 自然と人工の融合による機能性有機化合物の設計・合成

 有機材料は軽量で柔軟であり、加工しやすいことから、多くの市場での需要が高まりつつあります。その適用範囲は、太陽電池、記録媒体、ディスプレイ、照明など多岐にわたります。近年これらの技術は飛躍的な向上を遂げ、一部の商品は市販化されています。しかし、その技術の発展と革新に欠かせないのは新しい機能性有機化合物であり、新物質の創製を支えているのは有機合成化学なのです。  本研究室では自然界の生み出した機能性有機化合物であるポルフィリンに、人工的な変異(混乱、融合、拡張)を与えることで、さまざまな新物質を作り出してきました。それらの研究成果は国際的にも高く評価されており、一流国際雑誌に毎年多数の論文が掲載されています。時にはその表紙を飾ることもあります。

(2) 新たに創製した有機材料の機能評価

 古田研究室では新しい有機材料の合成だけでなく、機能評価も活発に行っています。例えば、吸収・発光特性の評価、酸化・還元能の測定、理論計算による電子構造の解析、X線解析による立体構造の解明などです。さらに、これらの知見を基盤に、高効率分子触媒、分子認識センサー、スイッチング素子の開発などの応用展開にも取り組んでいます。  専門性の高い応用研究では、国内外との共同研究も積極的に実施しており、「新物質の創製を基盤とした機能開発」研究の醍醐味を十分に堪能できます。また、これらの研究を通じて、有機合成化学だけでなく、光化学、錯体化学、理論化学、生体化学など幅広い分野の専門知識と技術を身につけることができます。

(3) 機能性ポルフィリンの分子エレクトロニクスへの応用

 上記の多様なポルフィリン誘導体は、その特異な光物性、電気化学的性質から分子性有機エレクトロニクスを担う重要な化合物群の一つです。軽量、フレキシブルなどの有機分子特有の利点に加えて、材料コスト面やデバイス作成プロセスなどの面において、従来の無機材料と比べて有利であるとされており、人々の暮らしをより豊かにするさまざまな応用展開が期待されています。例えば、ポルフィリンは色素増感太陽電池などの光捕集色素として、また有機薄膜太陽電池の電子供与性材料として注目されています。さらに効率化においては、テーラーメイドの最適ポルフィリン構造を設計・模索する必要があります。当研究室ではその構造―効率相関の解明を目指して、新規ポルフィリン誘導体の合成、同定、評価を行っております。またポルフィリンと同じく、分子エレクトロニクス材料として盛んに研究がなされているフタロシアニンやBODIPYなどにおいても独自の研究視点で「変異と進化」させることで、これらの応用研究におけるブレークスルーとなる機能性分子の創出を試みています。

研究室の方針

 有機合成化学、錯体化学、光化学、機能分子化学、超分子化学の知識を基盤に、新しい機能性分子の設計・合成を行います。さらにそれら新分子の解析を通して、分子科学の「新しい概念」を生み出すことを研究の基本姿勢としています。  基本的には一人一テーマで研究を進め、最終的には国内外の学会や投稿論文での成果発表を目指します。研究室生活を通して、企業、アカデミックを問わず、広く通用する優れた研究者へと成長するように指導を行っています。古田研は世界レベルの研究室を目指して、外国人研究員の受け入れ、海外の著名な研究者の招聘、海外の研究室との共同研究、博士課程学生の海外の研究室への派遣(数ヶ月〜1年)、などを積極的に行っています。次時代を担う意欲を持ち、世界に通用する研究者を目指す学生には魅力的な研究室だと思います。卒業生は、機能材料系、バイオ系や食品系などの幅広い分野に企業就職しているほか、アカデミックでも活躍しています。



学部生向けの研究室紹介スライド
2015年度 九重研修資料-ラボ紹介-(PDF)