九州大学大学院 工学研究院 応用化学部門(機能)
応用分析化学研究室
APPLIED ANALYTICAL CHEMISTRY LAB

"見えないはず"の分子たちのスペクトル

CAVITY-ENHANCED COHERENT RAMAN SPECTROSCOPY

光に映らない分子を、
読み解く。

水素、窒素、酸素——。空気の99%を占めるこれらの分子は、赤外線には原理的に映りません。私たちは、その"見えない分子"の声をラマン散乱で聞き取り、共振器の力で信号を桁違いに増幅する。世界最高水準の感度で、分子を読む研究室です。

THIS LAB IN THREE NUMBERS

99%
空気の主成分は赤外に映らない
×数千回
鏡の間で光を往復させ信号を増幅
1台
種類・同位体・濃度を同時に読む
Q1

THE INVISIBLE MOLECULES

水素は、なぜ"見えない"の?

分子を調べる定番の方法は、赤外線を当てて「どの色を吸うか」を見ること。ところが H₂ や N₂ のように同じ原子が2つ並んだ分子(等核二原子分子)は、振動しても電気的な偏りが生まれないため、赤外線を一切吸収しません。どんなに高級な赤外分光器でも、原理的にゼロ。——でも、光を"散乱"させるラマン分光なら、話は別です。

やってみよう:分子に光を当てる

分子を選ぶと、赤外分光とラマン分光での「見え方」の違いがわかります。

INFRARED ─ 赤外吸収分光

{{ irMsg }}

RAMAN ─ ラマン散乱分光

{{ rmMsg }}

{{ note }}

Q2

OUR INSTRUMENT

どうやって見るの? 武器は、鏡2枚と光の共振。

ラマン散乱には弱点があります——信号がとてつもなく弱いこと。私たちの答えが CE-CRS(共振器増強コヒーレントラマン散乱分光法)。向かい合わせた高反射鏡の間に光を閉じ込め、何千回も往復させて分子と出会わせることで、微かなラマン信号を桁違いに増幅します。装置は自分たちの手で設計し、組み上げます。

STEP 1

閉じ込める

反射率99.99%級の鏡でつくる「光の檻」にレーザーを共鳴させ、内部の光を極限まで強める。

STEP 2

揺さぶる

強められた光が分子の振動をコヒーレントに励起。散乱光には、分子ごとに固有の"指紋"が刻まれる。

STEP 3

読み取る

増幅された信号から、分子の種類・同位体・濃度を一台で同時に読む。微量成分の検出にも挑む。

光学定盤に並ぶミラーとレンズのマウント 共振器を構成するミラーとレンズの手元アップ 実験室の光学定盤の全景
光学定盤の上に組み上げた共振器。ミラーの角度は μm 単位で調整する。
Q3

WHAT WE CAN DO

それで、未来の何が読めるの?

「見えない分子が読める」——それだけで、エネルギーから医療、宇宙まで、一気に世界が広がります。ひとつの装置・ひとつのスペクトルで、これだけのことが同時にできるのが私たちの強みです。

ENERGY

核融合と水素社会を、
計測から支える

核融合炉の燃料は水素の同位体たち(D₂・T₂・HD)。どれも赤外では見えず、ラマンだけがその場で読める分子です。水素エネルギーの純度管理も同じ土俵。

  • 核融合燃料サイクルのその場計測
  • 水素キャリアの純度・クロスオーバー監視

HEALTH & LIFE

息を吐くだけで、
体の中がわかる

呼気に混じるわずかな H₂ や ¹³CO₂ は、腸や胃の状態を映す鏡。針を刺さず、その場で、リアルタイムに体内を読む——そんな診断の未来をつくります。

  • H₂ 呼気試験・¹³C 尿素呼気試験
  • ¹³C 標識薬の代謝をリアルタイム追跡

ISOTOPE FINGERPRINT

分子の"指紋"で、
由来を暴く

¹³C や D/H の同位体比は、分子がどこで生まれたかを語る指紋。ウイスキーの産地偽装から、CO₂ の排出源、そして彗星の水の起源まで。

  • 食品・酒の真贋鑑定(¹³C 比)
  • CO₂ の排出源特定(生物起源/化石起源)
  • 水の D/H 比で地球・惑星の起源を探る
さらに育てている芽: 蓄電池を封止したまま非破壊ガス診断 半導体プロセスガスの ppb 純度管理 宇宙・惑星探査での D/H 計測

WHAT YOU'LL GAIN

ここで手に入るのは、一生モノの4つの力。

レーザーを駆使し、鏡に向かい合い、スペクトルと格闘する毎日は、そのまま「研究者としての基礎体力」を鍛えるトレーニングです。

解く力

問題を解決する方法を発案し、実行する能力

装置は思い通りに動かないのが日常。原因を切り分け、打ち手を考え、自分の手で試す。このループを回し続けた人は、どんな分野でも強い。

学ぶ力

情報を収集し、自ら学ぶ能力

光学、電子回路、プログラミング、化学——必要な知識は分野をまたぎます。「教わる」から「自分で調べて使う」へ。学び方そのものが変わります。

伝える力

自分の考えを説明し、相手を説得する能力

どんな発見も、伝わらなければ存在しないのと同じ。ゼミ発表から学会まで、「相手を動かす説明」を実戦で身につけます。

見つける力

まだ見ぬ課題を発見し、その価値を見出す能力

いちばん面白いのは、誰も問題だと気づいていない問題を見つけた瞬間。世界最高感度の"眼"を持つと、見つかるものが変わります。

私たちのミッション —— 科学的知識を基礎とした新しい価値を創出する。自らの専門性を活用して社会に貢献できる人材を、この研究室から世に送り出します。

見えない分子、見に来ませんか。

研究室見学はいつでも歓迎です。緑色に光るレーザーと、鏡2枚の"光の檻"を、ぜひ自分の目で見てください。

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