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有機発光ダイオード

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Organic Light-Emitting Diode (OLED)

OLEDの研究は1987年のE.K.Kodak社Tang氏による報告を端緒とし、世界中の多くの研究機関で基礎研究・開発研究が行われてきました。OLEDを用いた車載用ディスプレイ、携帯端末ディスプレイ等で実用化が始まり、ついに昨年有機ELテレビが実用化されました。これらには、有機デバイスについて長年培われてきた多くの知見・技術が凝縮されています。さらなる発光効率・寿命の向上を目指し、現在も活発に研究が行われています。

有機ELディスプレイ

有機半導体を用いたデバイスの代表例の1つがOLEDであり、これを用いて最近実用化された有機EL(Electro-Luminescence)テレビが特に有名です。有機ELディスプレイは、反応速度、色の再現性、コントラスト比に優れた次世代の超薄型ディスプレイです。有機ELディスプレイはOLEDで構成されています。OLEDに電流を流すと素早く発光するのでディスプレイの反応速度は速く、動作表示に優れています。また、赤・緑・青の光を直接発光する(自発光型)ので色の再現性も優れています。さらに、電流のオフ状態は純粋な黒を表示できるので、高いコントラスト比を有しています。

OLEDの基本構造

現在実用化されているOLEDのほぼ全ては、真空蒸着を経て作成されています。透明電極(ITO電極等)付きのガラス基板の上に、真空中で加熱され気化した各種有機材料を膜厚~100nm程度堆積させ成膜します。さらにその上に金属電極も同様に成膜し、発光する有機半導体材料が電極でサンドイッチされたOLED構成が完成となります。上下の電極間に電圧を印加することで、透明電極側から光が出射されます。異なる発光材料を用いることにより、自由に発光色を変化させることも可能です。

OLED内におけるキャリア輸送と再結合

有機半導体材料には正孔の輸送が容易である正孔輸送材料や電子の輸送が容易である電子輸送材料が存在します。これらと、発光効率の高い材料とを組み合わせて機能を分担することで、OLEDの発光効率の大幅な上昇と低駆動電圧化が実現可能となりました。正孔が注入される陽極側(透明電極)には正孔輸送材料、電子が注入される陰極側(金属電極)には電子輸送材料を用い、その中間層に発光材料を使用しています。更に現在まで、様々な材料開発・デバイス設計を行い、低駆動電圧可能な有機半導体材料、無機半導体材料、金属材料を組み合わせ、超低駆動電圧の素子開発を進めています。

蛍光発光とリン光発光

有機分子は光励起下においては基底状態(S0)から一重項状態(S1)へ光吸収が起こり、この励起状態から再び基底状態へ放射失活する際に蛍光が生じます。しかし電流で励起子を生成した場合(電流励起)、電子とホールの再結合後、スピン統計則により一重項状態と三重項状態(T1)が1:3の割合で生成するため、蛍光発光するS1の生成効率は25%の低い値に留まってしまいます。リン光と呼ばれるT1からの発光は、本来禁制遷移であるため、75%もの励起子が非放射失活して発光に寄与できませんでした。しかしながら、IrやPtのような重原子を含む錯体による分子内の強いスピン相互作用により、通常禁制である三重項準位からの放射が緩和され、常温においてもリン光が観測できようになりました。これらの材料を用いることで、ほぼ100%の内部量子効率を得ることが可能となっています。現在はさらに、高電流密度領域における発光効率の低下を抑えるため、エネルギー移動過程や非放射失活過程についての詳細な追跡を行っています。